その花の記憶(+α)

 地震や津波の警報も解除され、テレビなども通常営業に戻ったようですね。大事なくて良かったです。皆様も大丈夫ですか?予定時刻には少し遅れましたが、アップします。掲載様子見の間、拍手・コメント下さった方、ありがとうございました。「えええっ?!あんなに長々と焦らしたくせに最終話でキスもなしっ!?」というお言葉と、「結局、オ・ナムソクって学生、何のために出てきたの?」という疑問におこたえする為、つくってみ...

その花の記憶(12)《終》

 頑なに唇を引き結んだままのカン・マエの鼻すじの通った白皙の横顔をしばらく見つめてから、「さっきの曲・・・」と、とうとう囁くほどにトゥ・ルミが口を開いた。意識を引き戻されるように幾度か瞬きをして、彼女を振り返りつつ彼は「ああ・・・」と頷く。「『愛の夢』―――ですよね?・・・リストの」ああ。・・・と彼は再度低く頷いた。それからルミへ向き直り、言葉が読めるようにゆっくりと尋ねる。「―――原題を、覚えているか...

その花の記憶(11)

 その日の全ての講義が終了すると、学生たちの準備により学芸館小ホールはたちまち懇親会の場として整えられていった。「こういうときばかりテキパキ動くのね・・・」とは弦楽器の講師をつとめる女性があきれぎみにこぼした台詞であるが、それは講師やスタッフ共通の思いでもあり、苦笑じみた視線が交わされる。留学生活も1週間を過ぎ、生活リズムにも慣れて互いに打ち解け、リラックスした雰囲気が醸成されてきたころである。懇...

その花の記憶(10)

 ―――翌朝、通常よりも早い時刻にマエストロ・カンは学芸館に出てきた。今日は彼の受け持ちの最終日であり、また、1週間のうちにそれなりに増えた手回りのものを取りまとめてミュンヘンへ送る手はずなども必要である。昨夕解けた誤解ではあるものの、逡巡の挙句、結局彼はトゥ・ルミには連絡をとらないままでいた。呼び出すわけにもいかず、あえてメールなどしてそもそもの経緯から説明するのも、彼女がミンスの婚約者ではなかっ...

その花の記憶(9)

   今さらなにを言う。カン・マエは困惑と苛立ちと非難とがないまぜになった視線で、まるでそこにルミがいるかのように鋭く指輪を射た。この2年間のメールのやり取りにはそんな素振りなど微塵も見せずにいたくせに。その上、出し抜けに他の男の婚約者として現れておいて、今さらこの指輪が支えだったなどと・・・。想う限りつけていたのだなどと・・・。第一、そんな指輪をつけていて、イ・ミンスに対してはどうしているのだ。...