マージナル(4)《終》

 今のルミには、室内から流れる曲は切れ切れにしか聞こえない。昨夜から聴力はまた不安定になっていた。3拍子の旋律をどうにか拾おうと耳に集中するとすぐに足が疎かになる。「曲を聴こうと思うな・・・。身体を合わせるだけでいいんだ」カン・マエの声がじかにルミの肌に響く。「はい・・・」それでもどうしても過去に習ったステップを頭の奥から引き出しつつ慣れぬ足の動きに集中しようとするため、ぎこちなさが拭えない。そん...

マージナル(3)

 「・・・・・・」身体に沿うほどのすっきりしたシルエットでタキシードを着こなし、片腕を腰の脇で軽く曲げるいつもの姿勢のカン・マエの立ち姿に、なぜだかドキリと大きく脈が跳ねてルミは一瞬息を呑む。「・・・先生」それから、ようやくつぶやくようなひと言が漏れた。室内からの煌々たる照明を半身に受けて、カン・マエの左目だけが白い光を帯びている。マージナル(3) ...

マージナル(2)

 「ドラマの中でお互いに気持ちを自覚しないまま。そしてソクラン市響が出来て1年」というパラレル設定です。全4話の(2)。 いよいよ混み合う会場のざわめきの中で、ルミはカン・マエに向き直り、「あの・・・ありがとうございます」仕方なく礼を言うと、「別におまえのためではない。彼の身を案じてだ」とたいして面白くもなさそうな口ぶりでカン・マエは言って、先ほどの金髪の男性の後ろ姿を顎先で指し示し、元コンマスを...

マージナル(1)

 《はじめに》ドラマ内設定ですが、パラレルです。時期はソクラン市響が設立されてから約一年が経過したころ。設定としては、市響を離れたメンバーはマウス・フィルとして活動。ルミは編曲の勉強をしつつマウス・フィルのマネージャー的役割で聴力は不安定。ソクラン市長は交代せずに音楽都市構想のカン・チュンベ市長が務め、カン・マエもソクラン市響芸術監督、総指揮の立場のまま。リトル・ゴヌはソウルの音大で指揮を学びなが...